8点『キリマンジャロの雪』無償の愛の物語

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2011年, フランス, 107分
ヴィクトル・ユゴーの『哀れな人々(フランス語: Les Misérables)』から着想を得た作品。

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あらすじ

フランスの港町マルセイユに住んでいるミシェルは、くじ引きでリストラの対象となり早期退職する。それでも、妻のマリ=クレールとの生活は変わらず穏やかで、結婚30周年の記念には、子どもや知人からアフリカのキリマンジャロ旅行をプレゼントされ、行くことを楽しみにしていた。ところが、出発を間近に控えたある日、2人の家に強盗が入る事件が起こる。その後ミシェルは、その犯人が以前一緒に働いていた若者だったことを突き止め…。

キーワード

☆リストラ
☆生活困窮者

感想

問題はたくさんだけど、ラストは心がフワッと暖かくなる作品です。

アーネスト・ヘミングウェイの短編小説と同名ですが、そちらは1952年に映画化されていて、今回観た作品との共通点は見当たりませんでした。

強盗に入る若者の境遇は、親に養ってもらえず、自分が幼い弟を養っていかなければならないという、まるで映画『誰も知らない』の、その後かのようです。
→映画『誰も知らない』について書いた記事はこちら

もしこの事件がメディアに取り上げられたら「若者が犯人です」「最近は凶悪な事件が若者に多く見られます、怖いですね」となるのかもしれません。

ただ問題は表面上には見えない所に隠されているのですよ

子どもがいるのに出ていった父親、子どもとの生活より新たな男性に人生を賭ける母親、両親のいない家で幼い弟を養おうとする若者はくじ引きでリストラ対象者になる…。これでは、この若者に、犯罪者になりなさいと促しているようではありませんか。

生活に困っているから強盗事件を起こして良い訳ではないけど、そうするしかなかったという状況が明らかになっていくと同時に、本当は誰が間違っているのかと考えさせられてしまいます。

だからこそ、ミシェルとマリ=クレールが最後に出した決断に心打たれるんです

強盗事件にまきこまれたのは彼ら2人の他に、同じ職場で働いていたミシェルの弟とその妻がいます。
事件で受けたショックをずっと引きずる義理の妹と、その妻を癒してあげることもできない夫の姿は、彼ら2人とは対象的です。

弟が「戦って手に入れた生活だ」と言いたくなる気持ちも、「ちょっと入ってきたばかりの若者が何もまだしていないで何を言うんだ」と、強盗犯が悪いと決めてかかる言動も分からなくはありません。しかし、時代も現状も何もかも違うのもまた事実で、この考え方をしている限り襲った犯人を憎み続け、事件を永遠に終わらせることができない負のループに突入することは目に見えています。

ミシェルが犯人を突き止めることで、その彼の抱える苦しさに気付き、マリ=クレールは外に出て人との出会うことで、犯人の家族に歩み寄ろうと、気持ちに変化が生じていくのです。

その行動は、辛い出来事は忘れたくてもそう簡単に忘れられないけど、前を向くことで新たな入り口が見えてくることを教えてくれます。

「彼が間違ったんじゃない」と犯行に及んだ若者を攻めず、「賛成してくれるとわかっていたから」と夫を信じ行動するマリ=クレール。何も言わずとも妻を信頼しているミシェルとの関係はステキです。

血が繋がっているから家族、なのではないのですよね

もう1つ。
なぜ題名が『キリマンジャロの雪』なのかは、分からずじまいです。
「夫婦が旅行するはずの場所だったから」では説明がつきません。

しかし、Wikipediaでキリマンジャロ山をマサイ人はンガジェンガ(神の家)と呼ぶと知り、ふっと思いつきました。
キリマンジャロに絶えずある雪というのを、彼ら2人が少年たちに対して自然と振る舞う行い=子どもや家族に本来ある(与えられる)無償の愛と当てはめることができるのではないかと。

やってしまった行いは、なかったことにはならないけど、それを許すことができた時、やってしまった時よりも前以上に良い変化を起こせる可能性があると、とても前向きになる作品に出会えました。

他人の目
この事件の隠された事実ともうひとつの見どころであるのが、個々の抱く気持ちがリアルに描かれているところです。

ミシェルとマリ=クレールには、もう独立している子どもたちがいます。
両親がすること、決めたことに「相談ぐらいして」というシーンがありますが、相談したら長引くこともあるのですよね。

いくら自分の子どもとはいえ、意見や気持ちは様々ですから

家族でもそうならば、世間の目だって同じです。
退職した後のミシェルがバルコニーで過ごす姿は「優雅で幸せそう」でもあり「やることもなくて寂しそう」にも見えます。それを見る側もまた「羨ましいと思う人」もいれば「可哀想とだと思う人」もいます。

本人がどう感じているのかよりも周りの目が世間に独り歩きしがちなのも事実ですが、人にどう思われているか?を気にするより自分が何をしたいか?なんですよね。
「もっと自分を大切してあげなきゃな」そう思うブー子なのでした。

おまけ

「名前の意味を話聞かせるシーンが好き」
…ということで備忘録です。
・マルタンは『守護聖人』由来は火星を表す戦いの神様「マルス」
・ジュールは木星の「ジュピター」

心に残る台詞

☆人生浮き沈みはあるさ
☆刑が何になるの
☆失恋は次の恋の前奏曲
☆何が大切か自分で決めるの

印象的なシーン

☆妻に解雇の報告をするシーン
☆客の好みがわかるバーテンダー


観てよかったか?
5点 大変良かった!
4点 良かった
3点 ふつう
2点 ん~~~
1点 所々寝た(とばした)
0点 見るのを止めた


もう一度観たいか?
5点 もう何度も観てる
4点 観たい
3点 観るかも
2点 何とも言えない
1点 できれば他の作品を
0点 記憶から末梢したい…

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ブー子