(更新 2016.01.28)

フランス語を聴いてみよう。CD『シェルブールの雨傘』

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「聞くだけで・・・」というあの商品ではないですが、
フランス語を耳で聞いて音に慣れたいという方には、もってこいのおすすめ映画『シェルブールの雨傘』。

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→映画『シェルブールの雨傘』について書いた記事はこちら

とにかく歌詞が聞き取り易いのです!
洋画を字幕で観て「ボンジュール」「こんにちは」と意味を理解しながら観て聴くのもいいけれど、

ブー太が見つけたのがコレ↓

『シェルブールの雨傘 オリジナル・サウンドトラック完全版』《2枚組》
そう、CDです。このCDをAmazonで試聴する

映画の感想にも書いてますが、この映画のすごいところは歌手が歌う歌に合わせて、役者が演技をしているミュージカルだということ。

録音に参加したミシェル・ルグランの姉、クリスチャンヌの言葉より
「(前略)普通の映画音楽の場合、俳優の動きに合わせて後から歌を録音するのだけど、彼の作品では歌は全て吹き替えだからあらかじめ私が歌ったものに、女優が合わせることになるのよ。つまり、あの映画ではアンヌ・ヴェルノンが私自身の感情表現に合わせて演技をしているの。実は歌手になる前の私は女優志望でね。だから、ちょっとした女優気分を味わうことが出来たのよ。・・・」
(CD解説「本作について」P5より)

 

このような制作中の裏話については後ほど触れるとして。↓下で書いてます。
なにせ、このCDの魅力は、これだけではないのです。

1996年にフランスで編まれ、その後、アメリカ盤、ドイツ盤が発売されたが、残念ながら当時日本盤は発売されなかった。(中略)やがて、日本独自でダイジェスト盤を編んだところ、後を追うように他国でもダイジェスト盤が発売された。ただし日本盤のみ内容が異なっている点は見逃せない。これは、映画評論家の野口久光と、当時、日本フォノグラムのデレクターだった本城和治が同社スタジオで独自に編集を行ったためである。
(CD解説「本作について」P4より)

 

日本盤だけでしか聴けない、オリジナルの[秘蔵デモ]と[カヴァー・ヴァージョン]が収録されているというではないですか

18曲目から20曲目はルグラン姉弟が映画製作前に吹き込んだデモテープからの収録。これは現在、ラストのシークエンスを除く音源が残されており、そこでは全編、クリスチャンヌとミシェルがそれぞ(れ)女声と男声のパートを2人で演じ分けながら歌っている。当初、ルグラン自身は、これらがデモテープであることから、収録に難色を示していたが、歴史的意義を鑑みて説得したところ、ようやく許可が下り、収録が叶ったという経緯がある。
(CD解説「本作について」P5より)

それはもう[秘蔵デモ]を聴く時にはテンションが上がりますよ
シーンのナンバを言ってから歌い始めるところなんか、何とも言えないスペシャルな感じです。

このCDでブー子が特に興奮したのが、17曲目に収録されている、ルグランのピアノ・トリオのアルバム「Parisian Blue」(91年)からの1曲。
『I Will Wait For You』
ピアノに合わせてドラムが心地良くリズムを刻むジャズから始まり、タンゴで破壊的にフィニッシュ!
もう、とにかくカッコイイ!!

しかも21曲目には、『I Will Wait For You』のビッグバンド・ヴァージョンが聴けちゃうという。
こちらはなんと、ルグランのパリ滞在時のホームグラウンドであるというプティ・ジャーナルで自らのバンドを率いて録音したものだとか。

もちろん、本編で流れる曲たちも映画の雰囲気そのまま収録されているところが、いい〜んです☆
中でも、CD2の11曲目の『マドロスダンスホール』。帰還したギイが愛しのジュヌヴィエーヴと他の男性との結婚を知り、ヤケになって仕事も辞め、一晩だけの女性に逃げてしまうというシーンの曲ですが、その時の彼の心情と虚しさが、けだるいピアノの旋律に合っていて、ウッドブロックの「コッコカッカ コッコカッカ コッコカッカコ …」という滑稽ともいえるリズムがマッチしているんです。その後のドラマ展開といったら、「もう、俺は一体何をしていたんだーーー」っていう、どうしようもない感じのギイなんだけど、側にはマドレーヌがいてくれて、、、というね。しかも、マドレーヌも都合のいい女ではない、というところも次の歌で歌いあげてくれるというのが素晴らしい。

…と、少し脱線しましたが映像と合わせて聴くのとはまたちょっと違った楽しみ方ができるのが魅力的です。

 
またCDの解説には、先ほど書いた通り、ミシェル・ルグランさんとジャック・ドゥミさんが、どのようにこの作品を作り上げていったかも書かれています。

望まれたスタイルに到達するまで、私はかなり試行錯誤を繰り返しました。(中略)1961年11月の初めの長い週末に、私達はノアルムティエ島に仕事をしに行きました。ジャックが大好きな、魅惑的な場所でした。とある宿の、ひどい音のする古いピアノがある奥の間に、私達はこもりました。そこで、ある雨の日にきっかけをつかんだのです。宝石店のシーン用に、私が新古典主義風のテーマを下書きしました。「私達は困っています。ジュヌヴィエーヴはおとなだし、精いっぱい私を助けてくれます…」ジャックはすぐに反応しました。「ミシェル、そのトーンだ!音楽と言葉が調和して、泉から水が湧き出てくるようだ!」まるで、糸のボビンのようでした。糸の端っこを見つけたことで、あとは手繰り寄せるだけでよかったのです。
(CD解説「ミシェル・ルグラン/『シェルブールの雨傘』について」P10〜11より)

それから、録音について。

忘れ難いのは、シャンゼリゼ通りのポスト・パリジャンで行われた録音です。リズム感のあるゼクヴェンツ(反復進行)のため、私はジャズに慣れた歌手を選びました。(中略)私達はまず、オーケストラのプレイ・バックを録音し、それから歌手の歌声を録音しました。そうすることによって、ミキシングで非常に融通がきくようになったのです。歌声を録音している間、俳優達もスタジオに来ていました。カトリーヌ・ドヌーヴは、ダニエル・リカーリに「私は、この台詞をこんな風に話すと思うの」といった指示を与えながら、彼女の役が録音されるのを見ていました。後で撮影する時に、歌声が、俳優達の
声に似るように。(中略)1ヶ月間、毎日、声と演技がシンクロするように繰り返し練習させたのです。彼らは非常に熱心に取り組んだので、撮り直しはほとんどありませんでした。いってみれば、シェルブールでの撮影期間を通して、私は(音と演技が)シンクロするための監視人でした。
(CD解説「ミシェル・ルグラン/『シェルブールの雨傘』について」P12より)

どのように作り上げていったのかを想像させていただけるところが、ありがたかったです。
最後に、心に残った文を少しだけ。

彼は白い紙を手に、ピアノに寄りかかり、私は鍵盤の前で、白い五線紙に向かっていました。「今は何も書かれていないけれど、1時間後には、あしたには、1週間後には、私達の紙は黒く埋まっていることだろう。何かを作り出していることだろう」と、私は言っていました。ジャックと私は、そんなふうに、創作における強烈な幸福を30年の間分かち合ったのです。
(CD解説「ミシェル・ルグラン/『シェルブールの雨傘』について」最後のページより)

歌そのものが物語になっている作品なので、このCDに映画の全てが詰まっているといっても過言ではありません。
単語の意味が分からないから理解ができない…という考えはこの際おいといて。
ギイとジュヌヴィエーヴの姿を思い浮かべ、シェルブールの世界を堪能するもよし、ただリラックスしながら聞くのもよしという、とっても贅沢なCDでした。

このCDには、フランス語歌詞・日本語訳が付いていないのがちょっと残念
ですが、セリフ(歌詞が)全文載っている本もあるようです。
こちらも気になりますな。

出演

 

役名 俳優 歌手
ジュヌヴィエーヴ・エムリー カトリーヌ・ドヌーヴ ダニエル・リカーリ
ギイ・フーシェ ニーノ・カステルヌオーヴォ ジョゼ・バルテル
エムリー夫人 アンヌ・ヴェルノン クリスチャンヌ・ルグラン
ロラン・カサール マルク・ミシェル ジョルジュ・ブラネス
マドレーヌ エレン・ファルナー クロディーヌ・ムーニエ
伯母エリーズ エミレイユ・ペレー クレール・ルクレル

その他、主な出演者
オーバン、自動車整備工:ジャン・シャンピオン
デュブール氏:ハラルド・ウォルフ

その他、主な歌手
ジャン、郵便配達夫:ミシェル・ルグラン
取り乱した客、ウェイター:ジャック・ドゥミ

曲名

 
1枚目
1・クレジット(インストゥルメンタル)〈2'13〉
2・ガレージのシーン:ギイ〈2'50〉
3・店の前で:ギイ、ジュヌヴィエーヴ、エムリー夫人〈1'43〉
4・伯母エリーズの家で:エリーズ、ギイ、マドレーヌ〈2'32〉
5・通りで:ジュヌヴィエーヴ、ギイ〈0'35〉
6・ダンスホールで:ギイ、ジュヌヴィエーヴ〈1'57〉
7・桟橋で:ギイ、ジュヌヴィエーヴ〈1'54〉
8・傘屋の中で:ジュヌヴィエーヴ、エムリー夫人〈5'24〉
9・デュブール宝石商の店で:デュブール、カサール、エムリー夫人、ジュヌヴィエーヴ〈4'13〉
10・店の中で:エムリー夫人、ジュヌヴィエーヴ、カサール〈3'20〉
11・ガレージの前で:ジュヌヴィエーヴ、ギイ〈4'55〉
12・エリーズの家で:エリーズ、ギイ〈1'42〉
13・アパートで:エムリー夫人、ジュヌヴィエーヴ〈2'48〉
14・エリーズへの別れ:エリーズ、ギイ、マドレーヌ〈1'51〉
15・駅(ギイの出発):ギイ、ジュヌヴィエーヴ〈2'28〉

2枚目
1・店の中で:エムリー夫人、ジュヌヴィエーヴ〈4'53〉
2・ディナー:エムリー夫人、ジュヌヴィエーヴ、カサール〈4'33〉
3・カサールのプロポーズ:カサール〈3'41〉
4・ギイの手紙:ギイ〈1'58〉
5・カーニバル:エムリー夫人、ジュヌヴィエーヴ〈7'58〉
6・結婚式〈1'03〉
7・ギイの帰還(インストゥルメンタル)〈0'43〉
8・エリーズの家で:エリーズ、ギイ、マドレーヌ〈4'13〉
9・ガレージ(言い争い):ギイ、オーバン、客〈1'55〉
10・カフェのギイ:ギイ、雇い主、工員2人〈1'46〉
11・マドロスダンスホール:ギイ、ジェニー〈3'14〉
12・ギイとマドレーヌの2重唱〈2'07〉
13・カフェのテラスで:ギイ、マドレーヌ〈3'08〉
14・ガソリンスタンドで:マドレーヌ、ギイ〈2'04〉
15・フィナーレ:ジュヌヴィエーヴ、ギイ〈5'00〉

+ ボーナス・トラック(日本盤初収録)
16・Watch What Happens [トニー・ベネット(Vo)]〈2'58〉
17・I Will Wait For You [トリオ・ヴァージョン]〈7'47〉
18・デュブール宝石商の店で [未発表デモ音源]〈1'42〉
19・伯母エリーズの家で [未発表デモ音源]〈3'05〉
20・カサールのプロポーズ [未発表デモ音源]〈3'19〉
21・I Will Wait For You [ビッグバンド・ヴァージョン]〈9'14〉



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ブー子