(更新 2016.02.16)

満点『秋刀魚の味』理想の父娘の姿がここにある

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1962年, 日本, 113分
ローアングルで撮影される、小津監督ならではの世界に、あなたもちょっぴり足を踏み入れてみませんか?

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感想

dTVにて、ニューデジタルリマスター版を再鑑賞。

海外の方にも人気の小津監督の作品の一つ。

映像はカラー。
こだわりをもって配置されている小物や人の動きなどが1シーン1シーン絵のようにとても美しい作品です。

妻に先立たれた平山や、長女の路子と次男の和夫と一緒に不自由なく暮らしている。職場では24歳になる娘の路子を嫁に出せと友人に見合いの話を持ちかけられるも、あまりその気ではない。ある日、恩師を招き中学時代のクラス会を開く。家に送り届けた時に、昔は若くてキレイだった娘が、父親の世話で婚期を逃してしまい、中華屋をやっている姿を目のあたりにした平山は、娘の今後を気にかけるようになっていく…。

実を言うと、初めて観た時は、ゆっくり流れる時間と、今と違う独特の構成や時代背景に、まぶた重くなってしまったブー子

なぜ、また見ようと思えたのかは、はっきりと覚えてはいない。
しかしその時に、お父さん役である笠智衆さんの優しい雰囲気や、独特の言い回しに惚れてしまったことは確かです。

その他魅力的な出演者の方には、娘の路子役に岩下志麻さん、バーのマダム役に、ムーミンの声優さんでも有名な岸田今日子さんがいらっしゃいます。

大きな事件も、争いも何もありません
小津監督が生涯を通し描いてきたテーマだという「妻に先立たれた夫、娘を嫁に出す父親」の姿と、何でもない日常・人間模様が温かい、「人生で1度は見ておきたい作品」としておすすめしたい映画の1つです

おまけ

※内容に触れていますので、知りたくない方は飛ばしてください。

恩師の店で出会った、平山の元部下(昔の隊員)・サカモトと一緒に軍隊の行進の真似をする「いつものアレ」のシーンが大のお気に入り
バーのマダムにも、平山にも「一緒にやりましょうよ」と調子のいいサカモトは、どこか、ドランクドラゴンの塚地武雅さん

思わず真似して口ずさんでしまいます。

その他、気になるシーン満載。
恩師の姿
恩師を招いての同窓会シーン。
社会的地位は逆転し、そこにはもう過去の威厳ある先生の姿はありません。

同窓会が終わる少し前に、平山と友人によって家に送り届けられますが、そこには父の帰りを待つ、かつては若く美しかった娘の姿が…。
彼女が、酔った父を見て涙する姿が、なんとも言えない寂しさを感じるのです。

その後、平山がお金を届けた際の娘の、皮肉れた対応には、もう何も言葉はありません。

ナチュラルな人間模様
なんでもない会話にクスッと笑え、時に哀愁をそそられます。

羨んだり皮肉たっぷりだけど嫌味のない話をする仲間たち。
「ひょうたん」と自らも言う元担任と教え子のやり取り。
食事処の女将、「TORYS(保守主義者) BAR」のマダムとのやり取り。
長男・幸一と嫁のやり取り。(「ゴルフクラブを買えない」とスネる夫への対応も分かります)
そして、平山家の家族のやり取りなどなど、

どれもこれもありきたりのようで、温かい

片想いだった三浦の話を聞き「後で後悔したくなかっただけ」と強がる路子の態度に気付かない父と幸一にはちょっとイラッとしますが

とにかく自然な人と人との対応・会話が魅力なのです

タイミング
掃除機、冷蔵庫やゴルフクラブを手に入れるのも、片思い同士で終わってしまった路子の恋も、何もかもがタイミング
買い物と恋愛を一緒にするのもおかしいけど、実際タイミングなのよねぇ〜…

お見合いの話を改めてお願いするシーン。「お前遅かったよ 気の毒だけど」と友人に言われるシーンでは、ドキッとしましたが、それからトントン拍子に進むストーリーに、
もう涙なくしては見られません。

ブー子が選ぶ「お父さんの気持ちが溢れてるシーン」


その1:結婚式の直前

父 「じゃあ 出かけるか」
(路子が椅子から立ち上がり、立って待っている父の前に座り両手を前につく)
路子「お父さん」
(父が静かにうなずく)
父 「分かってる分かってる まぁしっかりおやり 幸せになぁ」
路子「えぇ」

家族は荷物を持って部屋から退室。
荷物が少なくなった路子の部屋窓から見える団地が映る。

↑会話と映像のタイミングも素敵なんです。

その2:結婚式を終えた夜

マダム「今日はどちらのお帰りですか? お葬式ですか?」
平山 「うん まぁそんなもんだよ」

↑一足先に友人と別れ、BARに一人で寄った父の心境は、例えるとこんな感じなのでしょうか。

心に残る台詞

☆どうして日本は負けたんですかねぇ
☆けど負けて良かったじゃないか
☆ノーコメントか
☆娘をつい便利につかってしまった
☆お前も気付いたらこうなるぞ
☆嘘で良かった
☆若いもんは若いもんの方がいい
☆いやぁ 女の子はつまらん
☆結局人生は一人ぼっちです

印象的なシーン

☆「アレかけましょうか」坂本との「TORYS BAR」でのシーン
☆食べ物を貸し借りするシーン
☆布団がたくさん干された団地のベランダ
☆長男夫婦の会話のシーン
「ホントに買うわよ、買っちゃうから」などの、会話がかわいらしい。
☆路子の白無垢姿のシーン
美しい…


観てよかったか?
5点 大変良かった!
4点 良かった
3点 ふつう
2点 ん~~~
1点 所々寝た(とばした)
0点 見るのを止めた


もう一度観たいか?
5点 もう何度も観てる
4点 観たい
3点 観るかも
2点 何とも言えない
1点 できれば他の作品を
0点 記憶から末梢したい…

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ブー子